襖や障子の至るところ破れているのが、新しい、白ッちゃけた安手な建具であるだけに、一層哀れっぽく、情なく見える。
幸子は上本町の家の、間取りが旧式で、薄暗いのが嫌いであったが、矢張昔の格式のある家の方が、こう云う家よりは落ち着きがあった。
薄暗いと云っても、あの家にはささやかながら中前栽があって、奥の茶の間にいると、その前栽の植え込みを透かして、土蔵の戸前の見える風情が、今もなつかしく眼前に描かれるのであるが、この家には表と裏の塀際に植木鉢が置けるくらいな空地が取ってあるだけで、庭と呼べるようなものは附いていない。