下へ行った方が幾らか安全じゃないでしょうか、ねえ、下へ行きましょうよ、下でもみんな騒いでいるようですよ、―――停電していて真っ暗なので、輝雄の顔は分らなかったけれども、そう云う声に尋常でないものがあった。
幸子は悦子を恐がらせまいために口に出すことを控えていたのだが、この家が倒潰しはしないかと云う危険はさっきから感じてい、屋台骨がぐらぐらする毎に、今度こそ今度こそと思って冷汗を湧かしていたところだったので、輝雄の言葉を聞くと一も二もなかった。
雪子ちゃん、悦ちゃん、下へ行こうと云って、彼女を先頭に、三人つながりながら輝雄のあとに附いて階段を降りかけたが、途中まで来た時、今度こそ家が潰れたかと思う一陣の風が家を揺すった。