姉は梅子を両手で覆うように抱きながら袂を秀雄に取られていた。
(秀雄の恐がり方は奇妙で、風が止んでいる間は母の袂をシッカリと捩れるように捉えながら耳を澄ましてい、やがて遠くからごうと云う呻りが聞えて来ると、慌てて袂を放し、「恐いようッ」―――と、非常に低い、力の籠った掠れ声で云って、両手で耳の孔を塞ぎ、眼を潰って、顔を畳へ打つ俯しにするのであった)そう云う風に、四人の大人と七人の少年少女とがそこに蹲踞まっていた恰好は、恐怖の群像のように見えたでもあろうが、義兄の辰雄は別として、鶴子と、幸子と、雪子の三人は、こうして皆一緒に潰されるなら仕方がないと、言わず語らず覚悟していた。
そして、ほんとうに、あの風がもう少し長く、もう少し強く吹いたならば、あの家は潰れたに違いなかった。