小泉と云うのは、裏の塀一重向うの家で、勝手口から出ればその家の裏門が一と跨ぎの所にあった。
主人は退職の官吏とやらで、老夫婦に息子一人の三人暮しをしているのであったが、たまたまその息子の通っている中学が、輝雄の今度転校した中学と同じ学校だった関係から、便宜を計ってくれたことなどがあって、辰雄も輝雄も、二三度その家の応接間へ通ったことがあるのであった。
と、女中部屋にいたお春とお久とが、何かこそこそ相談し合っている風であったが、その時出て来て、そんならちょっと、小泉さんとこまでお久どんと二人で様子を見に行って参りましょう、と、お春が云った。