よろしゅうございます、そう致しましょう、なあお久どん、風が止んでる間に行って見よやないか、と、お春は奥でよいとも悪いとも云わないうちに自分ひとり承知して、怪我したらあかんで、吹き飛ばされんように気イ付けなさいや、と、鶴子と幸子が心配するのを聞き流しながら、お久を促して裏口から出て行ったが、やがて戻って来て、ちょっとも構いませんよってに何卒お出で下さい仰っしゃっていらっしゃいます、さあ、早う避難なさいませ、ほんに輝雄坊ちゃんの仰っしゃる通り、あのお宅はこの風でもピリッともしてやございません、彼方はまるで譃のようですわ、………と云いながら悦子の方へ背中を向けて、お嬢ちゃん、私が負うて参りましょう、とてもえろうて歩けるどこやあれしません、お春どんかて二度ばかり押し戻されて、這うて行きましたわ、いろいろなもんが飛んで来ますよってに、怪我せんように布団か何ぞお被りにならなんだらいけません、と云うのであった。
辰雄は、そしたらまあお前達は行きなさい、僕は留守番してよう、と云って動じないので、最初に輝雄と、哲雄と、幸子と、雪子と、悦子と、お春とが先ず避難した。
鶴子は夫を置いて行くのも気懸りなので、どうしてよいか迷っていると、お春が一人引っ返して来て、さあ坊ちゃん参りましょうと云って、とッとと正雄を背負って行き、又引っ返して芳雄を背負って行こうとするので、とうとうじっとしていられなくなって、自分が梅子を抱き、芳雄をお久に背負わせて避難した。