鶴子は夫を置いて行くのも気懸りなので、どうしてよいか迷っていると、お春が一人引っ返して来て、さあ坊ちゃん参りましょうと云って、とッとと正雄を背負って行き、又引っ返して芳雄を背負って行こうとするので、とうとうじっとしていられなくなって、自分が梅子を抱き、芳雄をお久に背負わせて避難した。
その間、お春の活躍は最も目ざましく、二度目に引っ返して来た時などは、何処かの物干台が路次へ崩れ落ちて来て、もう少しで下敷きになるところであった。
彼女はお久が芳雄を背負ったのを見ると、秀雄坊ちゃんいらっしゃいと云って、―――その児は大きいから宜しいと云うのも聴かずに、―――怯えている秀雄を背中に乗せて走った。