そんな風にして、お久までが逃げて来てしまったので、それから三十分程立つと、何と思ったか辰雄もバツの悪そうな顔をしながら、私もお邪魔に伺いましたと云って、勝手口から這入って来た。
風はその後もひとしきり吹き募って、戸外には相変らず物凄い呻りが聞えていたが、実際小泉方へ来て見ると、柱も壁もしゃんとしていて、家が潰れはしないかなどと云う懸念は、全然起りようもなく、普請の良い悪いでこんなにも安全感が違うものかと、不思議に思えるくらいであった。
そして蒔岡家の一同は、明くる朝の四時頃、風が漸う収まるのを待ってその忌ま忌ましい脆弱な家へ、まだ何となくビクつきながら戻って来たと云う訳であった。