姉の注文した中串と、幸子の注文した筏が焼けて来る間、ビールの肴に、幸子はひとしきりお春の店卸しをした。
自分の使っている小間使が褒められることは、主人としても鼻が高く、決して悪い心地はしないし、好んで人の欠点を吹聴するにも及ばないので、幸子はいつもお春のことを良く云われると、別に否定もせずに聞いているのが常であったが、又そう云っても、お春ぐらい外で評判のよい女中も珍しかった。
それと云うのが、交際上手で万事に如才がない上に、ひどく気前のよいところがあり、自分の物でも主人の物でも、構わず人にくれて遣ると云う風なので、出入りの商人や職人の間では、お春さんお春さんと云って大した持て方なのであるが、悦子の学校の受持の教師や、幸子の友達の奥さん達迄が、実に感心な女中さんだと、わざわざ伝言をして寄越すのには、幸子は開いた口が塞がらないことがしばしばあった。