彼女を清潔にさせて置くためには、誰かが傍に附いていて、そのつど無理に裸にさせて風呂へ入れてやるとか、時々行李の中を調べて、突っ込んである不潔な襦袢や腰巻などを引っ張り出して、見ている前で洗濯させるとか、云うくらいにしなければならないので、自分の娘を仕附けるよりも手数が懸る。
で、幸子よりも直接の被害者である傍輩の女中達の方が真っ先に悲鳴を挙げた。
お春どんが来てからは女中部屋の押入に汚れ物が一杯溜るようになって、穢くて仕様がない、自分ではどうしても洗わないので、私達が洗ってやろうと思って、それらの汚れ物を引っ張り出して見たら、中から御寮人様のブルーマーが出て来たのにはびっくりした、あの人は洗濯するのが面倒臭さに、お上のものまで穿いていたのだ、とか、あの人の傍へ寄ると臭くて溜らぬ、体が臭いばかりでなく、始終買い食いや摘み食いをするので、胃を悪くしていると見えて、息の臭いのが鼻持ちがならない、夜一緒に寝る時が一番困る、とか、とうとうあの人から虱を移された、とか、そう云う苦情が絶えないので、幸子も当人に因果を含めて尼崎へ帰したことが幾度かあったが、いつも父親と母親とが代る代るやって来て、巧いこと詑びを云って、否応なしに又置いて行ってしまう。