で、幸子よりも直接の被害者である傍輩の女中達の方が真っ先に悲鳴を挙げた。
お春どんが来てからは女中部屋の押入に汚れ物が一杯溜るようになって、穢くて仕様がない、自分ではどうしても洗わないので、私達が洗ってやろうと思って、それらの汚れ物を引っ張り出して見たら、中から御寮人様のブルーマーが出て来たのにはびっくりした、あの人は洗濯するのが面倒臭さに、お上のものまで穿いていたのだ、とか、あの人の傍へ寄ると臭くて溜らぬ、体が臭いばかりでなく、始終買い食いや摘み食いをするので、胃を悪くしていると見えて、息の臭いのが鼻持ちがならない、夜一緒に寝る時が一番困る、とか、とうとうあの人から虱を移された、とか、そう云う苦情が絶えないので、幸子も当人に因果を含めて尼崎へ帰したことが幾度かあったが、いつも父親と母親とが代る代るやって来て、巧いこと詑びを云って、否応なしに又置いて行ってしまう。
尼崎の家には彼女の下に二人弟妹がいるのだそうであるが、彼女だけが先妻の遺れ形見で、素質が悪く、学校の成績なども弟妹に比べて著しく劣るところから、父親にすれば後妻への遠慮があり、継母にすれば父親への気がねがあって、彼女を家に置いておくと風波が絶えない、そんな事情でございますから、行く行く当人が嫁に参ります年頃まで、何とかして御当家へ置いて下さいますように、と、父親も母親もそう云って幸子を拝み倒す。