ありていに云うと、彼女は板倉と云うものを、そう云う点では自分達と交渉のない階級に属する人間であると、極め込んでいたには違いなかったが、それならこの手紙に書いてあるようなことをまるきり想像もしなかったかと云えば、そうではなかった。
少くとも彼が妙子に対して献身的の奉仕をしたこと、あれから此方頻繁に出入りするようになったことの裏には、何かあるかも知れないと、ぼんやり気付いてはいたのであった。
彼女は又、自分が妙子の身になったとして、ああ云う際に一命を助けて貰った若い女の感動が如何に大きいものであるか、助けてくれた人に対して如何に深い感謝の念を持つようになるか、と云うことも察しられない訳ではなかった。