最初板倉は、自分だけが蘆屋の家へ自由に出入りすることを許されていて、奥畑には許されていないと云う事実、―――それが奥畑は何となく癪に触って、妬けてならないので、子供じみた忿懣を洩らすのだと思って、軽く聞き流していたのであったが、水害以来急に云い方があくどくなり、且妙子にも疑念を打ちまける迄になった。
でも奥畑は、これは君にだけ聞いて見るので板倉は知らないことだから、彼奴には黙っていてほしいと云っていたし、又実際自尊心の強い奥畑が、まさか板倉には云っていまいと思えたので、妙子はそのことについて直接板倉と話し合うことを避けていたが、板倉も亦、彼が責められていることを妙子には話さずにいたのであった。
そして妙子は、そのことが原因で奥畑とちょっとした諍いをし、電話が懸っても拗ねて出なかったり、わざと会う機会を与えなかったりしたことがあったが、あまり奥畑の気の揉み方が真剣なので、可哀そうになって来て、ごく最近、―――と云うのは、この手紙にもある通り今月の三日に久し振で会った。