それなら妙子はこの二人の云い分をどう判断しているかと云うと、正直のところ、うちは板倉のほんとうの気持をうすうす感じていないではない、板倉も利根だから、そんなことを色にも出しはしないが、あれ迄の冒険をしてうちを助けてくれたのは、多分単純な旧主人への恩返しや忠義ばかりではないであろう、彼自身それを意識しているかどうかは別として、啓坊に忠義を尽すよりはうちに忠義を尽しているのかも知れない、が、仮にそうであったとしても何も差支えない訳である、彼が埒を越えない限り此方も知って知らん顔していたらよい、あの通り中々重宝な男で小まめに用足しをしてくれるから、精々利用したらよいし、向うも利用されることを光栄に思っているのだから、そう思わせて置いたらよい、―――と云うのであって、彼女はその腹で彼と附合っていたのであるが、啓ちゃんが気が小さくて、嫉妬を焼くので、詰まらない誤解を受けるのも厭だから、絶交したのではないけれどもなるべく往き来しないように話合いを附けたのである。
だからもう啓ちゃんも疑念を晴らして安心している。
恐らく今では中姉ちゃんにこんな手紙を書いたことを後悔しているであろう。