幸子は九月に東京で見られなかった不満を充たし、且は悦子にも菊五郎の所作事を見せてやりたいと思っていた願いを果たしたことであったが、その夜、鏡獅子の後の幕間に、彼女が廊下へ立って行って不意に涙を落したのを、悦子は気が付かなかったけれども貞之助が見咎めた。
そして、何事にも感激性の強い妻ではあるが、それにしても変だと思ったので、
「どうしたんや、………」
幸子は九月に東京で見られなかった不満を充たし、且は悦子にも菊五郎の所作事を見せてやりたいと思っていた願いを果たしたことであったが、その夜、鏡獅子の後の幕間に、彼女が廊下へ立って行って不意に涙を落したのを、悦子は気が付かなかったけれども貞之助が見咎めた。
そして、何事にも感激性の強い妻ではあるが、それにしても変だと思ったので、
「どうしたんや、………」