出かける時はいつも急なので、幸子はそれを前日の午後、他の用件で事務所から電話が懸ったついでに聞かされたのであったが、どう云う風に話して貰ったものか、よく考を練って置く必要があるので、仕事部屋へ行っている妙子を呼び出して、直ぐに帰って来るように命じた。
と云うのは、一人前の洋裁師になるために仏蘭西へ修業に行きたい、と云う妙子の願望にはもう一つ奥があって、なぜ洋裁師になりたいかと云えば、将来奥畑と結婚した時に、自分が奥畑を養って行く場合が起りそうだから、―――と云う前提に基づいているのである。
そこで順序を蹈むとすれば、その前提条件、奥畑との結婚から承認して貰うことが先決問題なのであるが、そうなると事が面倒で、今の間には合わないであろうし、取次をする貞之助も、そう云う重い使命を負わされることは厭がるであろう。