彼女の考では、お金は妙子自身のものを出して貰えばよいので、本家の腹は痛まない筈であるけれども、何事にも退嬰的な本家が、女の洋行などと云うことを簡単には許しそうにもないので、又駈落でもされたら大変であるから、―――と、多少嚇かすような意味合で話して貰う、と云う訳であった。
で、貞之助はそのため特に滞在期間を一日延ばして、三日の午後二時頃と云う時間を選んで渋谷へ行ったが、それは義兄よりは義姉の方が話しよいように思えたからであった。
姉は一と通り聞いてしまうと、趣意はよく分りましたけれども私には何とも云えないから、辰雄の意見を聞いた上で、追って幸子ちゃんの方へ手紙で返事することにしましょう、その手紙も、こいさんが急いでいるなら成るべく早く出すようにしましょう、毎度ながら妹たちのことであなたにまでいろいろ御心配をかけて申訳がないと、そんな風な挨拶であったが、無論即答が得られる筈のものではないので、貞之助はそう云う姉の言葉を齎して帰って来たに過ぎなかった。