姉は一と通り聞いてしまうと、趣意はよく分りましたけれども私には何とも云えないから、辰雄の意見を聞いた上で、追って幸子ちゃんの方へ手紙で返事することにしましょう、その手紙も、こいさんが急いでいるなら成るべく早く出すようにしましょう、毎度ながら妹たちのことであなたにまでいろいろ御心配をかけて申訳がないと、そんな風な挨拶であったが、無論即答が得られる筈のものではないので、貞之助はそう云う姉の言葉を齎して帰って来たに過ぎなかった。
幸子は、そうは云っても悠長な姉のことではあり、義兄も事を決定するのに手間の懸る方であるから、直ぐには返事が来ないであろうことを予期していたが、それきり十日以上たっても何の音沙汰もなく、十一月もとうとう下旬になってしまった。
あなたから一遍催促して見てと、貞之助に云っても、僕は皮切りをしたのだから後は知らないと、逃げを打つので、幸子から、こいさんの話はどうなったでしょうか、行くとすれば出発は正月なのだから、と云ってやったけれども、矢張梨の礫であった。