と、貞之助は云った。
幸子は、従来から本家に対して雪子以上に悪感情を抱いている妙子に、姉夫婦の意向をありのままに伝えることは一往躊躇したけれども、隠さない方がよいと云う夫の意見もあるので、翌日その手紙を読ませたところ、結果は案じていた通りであった。
妙子の云い分は、自分は既に子供ではないのだから、身の振り方を定めるについて、兄さん達の指図は受けない、自分のことは誰よりもよく自分が知っている、一体職業婦人になることがどうしてそう悪いのであろう、兄さん達は未だに家柄とか格式とかに関わって、一家一門の中から女洋裁師が出ることを、ひどく不名誉か何ぞのように思うのであろうが、それこそ時代後れの嗤うべき偏見ではないか、こうなったら自分が行って堂々と所信を述べ、兄さん達の誤った考を説破してやる、と云うのであったが、金の問題についての憤激は非常なもので、そう云うことを兄さんに云わして置く姉ちゃんが悪い、と、今迄義兄を攻撃しても姉を批難したことはなかったのに、今度は専ら鉾先を姉に向けた。