なるほど、名義は私のものになっていないかも知れないが、将来私に与えるべきものとして兄さんが預かっているものがあることは、富永の叔母ちゃんからも聞いているし、姉ちゃんもいつかそう云ったではないか、それを今になって、そんな曖昧なことを云うのは怪しからない、本家は子供が殖える一方で暮しが懸るものだから、兄さんもいつの間にか気が変ったのであろうが、姉ちゃん迄がそれを平気で取次ぐと云う法があろうか、よろしい、本家がそう云うなら此方にも覚悟がある、きっとそのお金は取るようにして取って見せる、と、泣いて敦圉く始末なので、幸子はそれを宥めるのに一と汗掻かねばならなかった。
まあ、貞之助兄さんの云い方も拙かったのかも知れないから、そう一途になられては困る、こいさんの云うことも分るけれどもあたし等の立ち場も考えて貰いたい、直かに談判しに行くのもよいが、話すなら穏かに話したらどうか、本家に対してこいさんが喧嘩腰になられたら、私等が迷惑する、私等はそんなつもりでこいさんの味方をしたのではないのだから、―――と、こうも云い、ああも云いして言葉を尽したが、妙子も一時忿懣の余り感情の掃け口を求めた迄で、さすがにそれを実行する迄の勇気はないらしく、二三日するとだんだん興奮が静まって、いつもの落ち着いた妙子になった。
そして、それきりそのことをふっつり口にしなくなったので、ほっとしながらも幸子が内心気にしていると、十二月の中旬頃であったか、或る日突然、午後早く帰宅して、