玉置女史が洋行しようと云うのは、野寄の洋裁学院を改築しなければならないので、その間に、と云う訳だったのであるが、その後被害の状況を調べると、殆どもとの建物は役に立たなくなっており、根本的に建て直す必要のあることが分った。
しかしそうなると、人手や資材の不足な時節柄、経済的にも時間的にも容易な仕事ではないので、この間から思案中であったところ、幸い阪急の六甲に大した費用を懸けないでもそのまま学院に利用出来る格安な洋館の売り物が見附かり、それを買うことになったのであるが、そう云う建物が手に入って見ると、直ぐにも再び学院を経営したくなったことが一つ。
それと、女史の夫君が、矢張欧洲の動乱と云うことを心配し出して、洋行を中止するように勧告したことが一つ。