あれから後、板倉は訪ねて来たことがなく、電話や手紙の遣り取りなどもしている様子は見えないけれども、何分妙子は一日の大部分を外で暮しているのであるから、何処でどう云う風な絡繰をしていないものでもない。
あれきり板倉が全然姿を現わさなくなったと云うことは、却って尋常でないようにも思われ、蔭で交際しているのではないかと云う邪推も起る。
幸子のそんな風な疑念は極めて漠然としたもので、拠りどころのあるものではないけれども、それだけになお日が立つに連れてますます深く濃くなって来、どうしてもそうに違いないような気がすることもあった。