いったい妙子は、人形の製作をし、舞を習い、洋裁を稽古する、と云った風に多方面の仕事を持っており、姉妹達の誰よりも社会の各層に接触するので、自然それだけ下情にも通じ、一番末の妹の癖に一番世間を知っているのであるが、幾らかそれを自慢する風があって、ややもすると幸子や雪子をお嬢さん扱いするのを、今迄は一種の愛嬌としてほほ笑ましく見過していたのだけれども、こうなって来ては幸子も捨てて置けない気がした。
彼女は本家の姉ほどには昔気質でなく、旧式の思想に囚われていないつもりであったが、それでも自分の姉妹達の中に、こう云う口のきき方をする娘がいることは不愉快であった。
そして、妙子のそう云うような傾向は、誰か彼女に特定の感化を及ぼす人間が蔭にいることを、暗示しているように思えたが、そう気が付くと、板倉のあの冗談の云い方や、観察の仕方や、その他の言語動作の上の品の悪さが、彼女のそれと一脈通じるかの如く見えて来るのであった。