姉妹達の母親は、妙子が漸く小学校へ上った頃亡くなったので、彼女はその人の面影について、朧ろげな記憶しか持っていない。
そして父親と云う人は、派手好みの豪奢な人であったから、娘達にもあらゆる贅沢をさせてくれたらしいのだけれども、彼女は自分がどれだけのことをして貰ったか、身に沁みて覚えていることはないと云ってもよいくらいである。
僅かな年齢の相違でも、雪子となると父親についていろいろな思い出があり、あの時にああもして貰った、こうもして貰ったと、よくそんな話をするのであるが、妙子は余りに幼な過ぎて、して貰ったことがあったとしても、それが本当に身に着いてはいなかった。