彼女はこの五月にその話を幸子から聞かされた当時、そんなことは風説に過ぎないと云って表面否定し去ったけれども、実はあの頃からそれが問題になっていたのであった。
尤も奥畑のお茶屋遊びは前からのことではあったが、当人は、これも君との結婚を許して貰えない憂さ晴らしだから、大目に見てくれ、但し僕のは女達を集めて無邪気に酒を飲むだけだ、決して節操を汚すようなことはしないから、それは信じてくれと云っていたので、その程度のことは諒解してやっていたのであった。
それと云うのが、あの時にも話したように、彼処の家の一族は兄さん達でも叔父さんなどでも皆一廉の極道者であり、そう云う妙子自身の父も、よく遊ぶ人であったのを幼い時から見て知っているので、それくらいは啓ちゃんとしても仕方があるまいと、節操さえ守ってくれるなら野暮は云わないつもりでいたところ、奥畑の云うことは真っ赤な譃で、完全に人を欺していたのであることが、ふとした事件から次々に知れて来た。