踊り子母子の方は手切金の証文まで持って来て見せたから、まさか譃ではないであろうが、芸者の方は、切れたと云っても証拠のないことで分らないし、この外にもまだ何があるか知れたものではなかった。
それでも奥畑は、こいさんと結婚したい熱意に変りはないと云い、僕のこいさんに捧げる愛情は、そんな女達に対する気持とは一緒にならないなどと云ったが、彼女はどうも、自分も一時の慰みにされてしまいそうな気がして、正直のところは、その前後から嫌悪を感じるようになった。
彼女はただ、姉達を始め世間の人達から、それ見たことか、あんな男の云うことを真に受けて結局欺されたではないか、と云われるのが口惜しさに、約束を解消すると云うところまでは容易に決心がつきかねたけれども、暫くでも彼と離れて、ゆっくり考えて見たかったのであった。