そんな工合で、結局彼は一往も二往も躊躇すると見せかけながら、ずるずるに妙子の申込みを承諾したような形になった。
二人はさしあたって、自分達が結婚の約束をしたことは当分の間誰にも絶対に秘密にして置くこと、それより先決問題は妙子が奥畑との婚約を取消すことであるが、それも性急な手段を避けて、徐々に奥畑に分らせるように、出来れば奥畑が自発的に断念するように仕向けること、その最良の方策として、妙子は是非洋行すること、自分達が結婚するのはまだ二三年先でよいが、その場合方々から経済的圧迫を加えられるようなことがあるかも知れないから、今からそれに対抗する用意をして置くこと、その用意の一つとしても妙子は洋裁の技術習得に精進すること、等々を申し合せてそれを実行するつもりであったが、間もなくハタと当惑してしまった。
と云うのは、妙子の洋行の計画が、本家の反対と玉置女史の予定変更のために実現不可能になったからであった。