それに彼女は、遠い外国に離れているなら、板倉と半年や一年会わずにいるのは我慢出来るが、つい目と鼻の所にいて、一方では絶えず奥畑に着き纏われながら、板倉と会わずに暮すと云うことは堪え難かった。
で、最近では、洋行が駄目ならもう仕方がない、とてもこのままでこれ以上奥畑の眼や世間の眼を胡麻化して行くことはむずかしいから、いっそ各方面との摩擦を覚悟の上で、一日も早く結婚してしまおう、と云う方へ、だんだん考が傾いて来ている、ただ目下のところ、妙子にも板倉にも、まだ経済上の準備が十分出来ていないのと、それから、彼等自身はどんな社会的制裁でも受けるが、雪子が飛ばっちりを浴びてますます縁遠くなっては気の毒であるから、どうしても雪子の縁づく迄待たなければならないのと、それだけの理由で躊躇している、と云うのが実状なのであった。
「そしたら、………こいさん板倉とそんな口約束しただけで、それ以上何もないのんやろか?