そして、中姉ちゃんはそう云うけれども、板倉はうちをお嫁に迎えることを非常な名誉に感じている、当人ばかりでなく、田中の家にいる妹も、田舎にいる親達も、兄達も、そう云うお宅の娘ちゃんに来て戴いたら自分達も鼻が高いと云って、涙を流して喜んでいる、うちが田中の家へ行くと、板倉は妹を掴まえて、お前等そんな所からこいさんに挨拶する身分やあれへんねん、昔やったら次の間に手ェつかえて物云うたんやで、と云ったりして、兄妹でうちを下へも置かないようにする、などと、しまいには惚気交りにそんなことを云う始末であった。
幸子はそう云う話を聞くと、僕は蒔岡家のこいさんを嫁に貰うんやでと、例の調子で得意になっている板倉の様子が眼に見えるようであったが、当分秘密にするなどと云いながら、もうそのことを田舎へ行って吹聴しているのかと思うと、いよいよ不愉快になるのであった。
それでも妙子は、この前のあの新聞の事件が雪子に飛んだ傍杖を食わせたところから、今度は雪姉ちゃんが縁づく迄は軽はずみなことはしないと云っているので、そう急に破局が迫っているのでないことが、幾らか幸子を安堵させた。