幸子はそう云う話を聞くと、僕は蒔岡家のこいさんを嫁に貰うんやでと、例の調子で得意になっている板倉の様子が眼に見えるようであったが、当分秘密にするなどと云いながら、もうそのことを田舎へ行って吹聴しているのかと思うと、いよいよ不愉快になるのであった。
それでも妙子は、この前のあの新聞の事件が雪子に飛んだ傍杖を食わせたところから、今度は雪姉ちゃんが縁づく迄は軽はずみなことはしないと云っているので、そう急に破局が迫っているのでないことが、幾らか幸子を安堵させた。
彼女はさしあたり、強いて抑え付けようとすれば反動的に激発する恐れもある、どうせ雪子の身が極まるのは早くても半年ぐらいは先であろうから、その間に気長に妙子を説得もし、工作も施して、徐々に心境を変化させるように指導しよう、と思案をきめて、今のところは一往妙子の意志を認め、なるべく逆らわないようにするより外はなかったが、そうなると又、雪子の立ち場が可哀そうに見えて来るのであった。