それよりも何よりも、雪子としては、自分は決して結婚を焦ってはいないし、こいさんの飛ばっちりを受けたことなんか恨んでもいない、自分の運命はそんな下らない事件の影響で左右されはしないから、こいさんは私に気がねしないで先に結婚してくれたらよい、と云うでもあろう。
と云って妙子も、恩に着せるようなつもりはないに極まっているが、雪子の結婚がおくれているのに痺れを切らしていることは事実で、抑〻あの新聞の事件にしても、あの時分に雪子が既に縁づいているか、直きに縁づくような形勢であったら、彼女がいくら若かったとしても、好んでああ云う非常手段に出なかったことは確かであった。
要するに、この姉妹たちは仲が好いので決して諍いにはならないのであるが、冷静に観察すれば、雪子と妙子の間には可なり険しい利害の対立が潜んでいるのであった。