それは坊々育ちの極道者かも知れないし、甲斐性なしであることも事実であろうし、見るから軽薄な、感じの悪い青年であることは分っているけれども、もともと彼女とは幼な馴染の、船場の旧家の生れであり、同じ人種のようなものであって見れば、好きも嫌いもその範囲内でのことである。
彼と妙子とを正式に結婚させる分には、さきざきどんなに困るようなことがあるにしても、さしあたって世間の手前は悪くないが、妙子が板倉と自由結婚すると云うことになれば、これは明かに、社会的に嘲笑を招くであろう。
だから、奥畑との結婚を切り離して考えれば、決して望ましいことではないが、板倉との問題が生じて見れば、それを防止するために寧ろ前者を択んだ方がよいくらいである。