彼と妙子とを正式に結婚させる分には、さきざきどんなに困るようなことがあるにしても、さしあたって世間の手前は悪くないが、妙子が板倉と自由結婚すると云うことになれば、これは明かに、社会的に嘲笑を招くであろう。
だから、奥畑との結婚を切り離して考えれば、決して望ましいことではないが、板倉との問題が生じて見れば、それを防止するために寧ろ前者を択んだ方がよいくらいである。
―――と、そう云うのが幸子の意見であるが、貞之助はその点進歩的で、家柄と云うこと一つを除けば、奥畑が板倉に勝っているところは何もない、結婚の条件としては正しくこいさんの云う通り、愛情と、健康と、自活する力との三つを備えていることが何よりも大切であり、板倉はそれが試験済みであるとすれば、家柄だの教養だのにそうこだわる必要もないではないか、と云うのであった。