―――と、そう云うのが幸子の意見であるが、貞之助はその点進歩的で、家柄と云うこと一つを除けば、奥畑が板倉に勝っているところは何もない、結婚の条件としては正しくこいさんの云う通り、愛情と、健康と、自活する力との三つを備えていることが何よりも大切であり、板倉はそれが試験済みであるとすれば、家柄だの教養だのにそうこだわる必要もないではないか、と云うのであった。
尤も、貞之助もそんなに板倉が気に入っているのではなく、奥畑との比較に於いて板倉を取ると云うだけなので、本家がそれを許す筈のないことも知っており、自分が進んで本家との間を斡旋しようと云う程の好意も持ってはいないのであるが、彼に云わせると、こいさんと云う人は性格から云っても、過去の経歴から云っても、習慣的な方法で結婚するなんて云うことに向かない人だ、あの人は自分で好きな相手を見付けて自由結婚をするように出来ているのだ、又その方が、こいさんの場合には普通の結婚をするよりも有利である、こいさん自身もそれを知っていればこそそう云うのだから、なまじわれわれが干渉しない方がよかろう、これが雪子ちゃんとなると、とても世間の荒波の中へ放り出せるような人ではないから、われわれが何処迄も面倒を見、然るべき順序を蹈んで良縁を求めてやらなければならず、そうなれば又、血統とか、財産とか云うことも問題にしなければならないが、こいさんは違う、あの人は突き放されてもどうにか独りで遣って行ける人だ、と云うのであった。
が、貞之助の態度は飽く迄も消極的で、意見を聞かれればそう答えるより外はないが、これはお前にだけ云うのである、決して僕の考はこれこれだなどと、本家は勿論、こいさんにも云ってくれては困る、僕はこの問題には徹頭徹尾局外者でありたい、と、そう云うので、