そして、八階ホールの会場へ上って見ると、舞台ではもう妙子が舞っているのであった。
幸子の話だと、今日の会は郷土会の会員の外に、「大阪」同人会の方の会員と、その会が発行している機関雑誌の読者などが主で、一般に公開するのではないから、そんなに大勢は来ないであろうと云うことであったが、近頃珍しい催しなので、手蔓を求めて招待券を都合した者が多いらしく、椅子席は殆ど満員で、うしろの方に立って見物している一群もあった。
貞之助も、席を捜している時間がないので、立っている人々の肩の間から覗いていたが、ふと気が付くと、一間ばかり離れたところに、見物人の最後列に立って、ライカを舞台の方に向けて、ファインダーに顔を押し着けている男のいるのが、板倉に紛れもなかった。