幸子の話だと、今日の会は郷土会の会員の外に、「大阪」同人会の方の会員と、その会が発行している機関雑誌の読者などが主で、一般に公開するのではないから、そんなに大勢は来ないであろうと云うことであったが、近頃珍しい催しなので、手蔓を求めて招待券を都合した者が多いらしく、椅子席は殆ど満員で、うしろの方に立って見物している一群もあった。
貞之助も、席を捜している時間がないので、立っている人々の肩の間から覗いていたが、ふと気が付くと、一間ばかり離れたところに、見物人の最後列に立って、ライカを舞台の方に向けて、ファインダーに顔を押し着けている男のいるのが、板倉に紛れもなかった。
貞之助ははっとして、先方から見付けられないうちに遠い隅の方へ逃げて来て、時々こっそり窺うと、板倉は外套の襟を立てて顔を埋め、めったにキャメラから首を挙げないで、つづけざまに妙子を撮っている。