それが、一般の観客はどうか分らないが、貞之助には、如何にも人を食った、褒められようが腐されようが構わないと云った風な、度胸で舞っている感じがして、小面憎くさえ思えるのであったが、でも考えれば、彼女は今年二十九と云う大年増で、もう芸者ならば老妓と云ってもよい年頃だとすると、そのくらいな度胸があっても不思議はない訳であった。
そう云えば彼は、去年の舞の会の時にも、平素は十以上も若く見える妙子が、その日に限って年増の地金を露わしているように感じたのであるが、こうして見ると、日本のこう云う徳川時代的服装は、大体に女を老けさせるのであろうか。
それともこれは妙子に限ったことなので、一つには平素の溌剌とした洋装に対照させる古典的服装のせいでもあるが、一つには彼女が舞の時に示す舞台度胸のせいでもあろうか。