口数の少い、いるのかいないのか分らないようにひっそりしている雪子が一人殖えたからと云って、格別家の中が賑かになる訳もないのだけれども、こうして見ると淋しい彼女の人柄の中にも、矢張明るさが潜んでいるのであろう。
それと一つには、三人の姉妹が同じ屋根の下に集ると云うことが、それだけで家の中に春風を生ぜしめるので、この三人の中の誰が欠けても諧調が失われるのであろう。
そう云えば、あれから長い間空家になっていた旧シュトルツ邸も、漸く借り手がついて、夜な夜なコック場の硝子戸の中から燈火が洩れるようになった。