貞之助は、そこらに散らばっているキラキラ光る爪の屑を、妙子がスカートの膝をつきながら一つ一つ掌の中に拾い集めている有様をちらと見ただけで、又襖を締めたが、その一瞬間の、姉と妹の美しい情景が長く印象に残っていた。
そして、この姉妹たちは、意見の相違は相違としてめったに仲違いなどはしないのだと云うことを、改めて教えられたような気がした。
三月に這入ってから間もない時分、或る夜眠りに就いた貞之助は、ふと、妻の涙が自分の頬を伝わって流れるのを感じて眼を覚ますと、暗がりの中で妻の微かに嗚咽する声を聞いたことがあった。