貞之助たちは、一昨年夙川の彼等の家へ招かれてから、一度お返しをしなければと云いながらそのままに過してしまって、時々電車などで顔を合わす外には往き来したこともなかったけれども、妙子を通じて、あの「お婆ちゃん」や、キリレンコ兄妹や、ウロンスキー等の消息は絶えず聞かされていた。
あれから此方、カタリナは人形製作の仕事にひとしきり程の熱意は持たないようになったが、と云って全く放棄してしまったのではなく、忘れた時分にひょっこり妙子の仕事部屋に現れ、近作を示して批評や指導を乞うと云う風で、二三年の間に技術も相当進歩していた。
が、いつ頃から始まったことか分らないが、そののち彼女にはルドルフと云う独逸人の「好い人」が出来て、それとの交際が面白いらしく、人形製作への熱意の減退もそれから来ているもののように妙子には思えた。