が、いつ頃から始まったことか分らないが、そののち彼女にはルドルフと云う独逸人の「好い人」が出来て、それとの交際が面白いらしく、人形製作への熱意の減退もそれから来ているもののように妙子には思えた。
ルドルフと云うのは独逸系の某会社の神戸支店に勤めている青年社員で、妙子も嘗て元町の街上で紹介されたことがあり、それからも始終二人が散歩するのに行き合わすのであるが、見るからに独逸式面貌の、好男子と云うよりは素朴で剛健な感じのする、背の高いがっしりした男であった。
で、今度カタリナが独逸へ行く決心をしたのは、ルドルフと相識るようになってから独逸が好きになったのと、ルドルフの斡旋で、伯林にいる彼の姉の許へ身を寄せることが出来るようになったのと、そんなことから思い立ったのだそうであるが、しかしカタリナの終局の目的は、前の夫との間に出来た幼い娘が住んでいる英国に渡ることにあって、伯林へ行くのは、旅費その他の関係から、一旦欧洲大陸の一角に辿り着いた上で、そこを蹈台にしようと云う訳なのであった。