狭い店内は客が鍵の手に十人も椅子を連ねることが出来たであろうか。
貞之助達の外に、この近所の株屋街の旦那らしいのが店員を二三名連れたのと、その向うの端に、花隈の芸者らしいのが姐さん株を頭に三人いるのと、それだけでもうぎっしりで、客達のうしろと壁との間には、人一人が辛うじて通れる通路しか空いていなかった。
それでも時々表の障子を開けては満員の店内をジロジロ見渡して、何とか都合して貰えないだろうかと懇願する―――哀願さえもする―――客が絶えないが、この店の親爺もよくある鮨屋の親爺の型で、無愛想を売り物にしており、常連のお客でも予め申込を聞いていない限り、這入れるかどうか見たら分るだろうと云う顔をして、突慳貪に断ってしまう。