それには食器などを扱う下働きの下女は危険で、さしあたりお春が最も適任であり、当人も亦、伝染病を恐れないことにかけては誰よりも勇敢なところから、喜んでその役を買って出たが、二三日勤めさせて見ると、自分が恐がらないのはよいとして、病室の出入りに消毒することを実行せず、病人に触った手で何にでも触ると云う風なので、あれでは病菌をバラ播くようなものだと、第一に雪子から苦情が出た。
そして結局、お春が罷められて雪子が任に当るようになったが、これはこう云うことには馴れたものなので、注意が甚だ細心であり、と云って徒に恐がるのではなく、看護も実によく行き届いた。
彼女は病室用の食器類は全然下女達の手を藉りず、煮焚きから持ち運びから、洗滌までを自分が担当し、高熱が続いた一週間程の間は、夜は看護婦と交代して二時間置きに氷嚢を取り換えなどして、殆ど眠らない日が多かった。