幸子が一度招かれて行った時、彼女の部屋へ這入って見ると、すべて紫檀製の支那式家具が置いてあったと云うから、矢張事実は支那人であって、それを秘しているのかも知れない。
ただ明かなことは、彼女が東洋的魅惑と西洋的均整とを兼ね備えた妖婦型であることで、一と昔前の亜米利加の映画女優にアンナ・メイ・ウォンと云う仏蘭西人と支那人の混血児がいたが、あれにちょっと感じが似ている、或る種の欧羅巴人に気に入りそうな異国趣味の美人なのであった。
彼女は夫の旅行中徒然に暮す日が多いので、何卒奥さんに遊びに来て下さいと、アマを介して云って寄越したり、路で遇った時に誘ったりして、幸子に交際を求めるのだけれども、幸子は刑事の話を聞いてから、係りあいになることを恐れて成るべく近寄らないようにしていた。