ただ明かなことは、彼女が東洋的魅惑と西洋的均整とを兼ね備えた妖婦型であることで、一と昔前の亜米利加の映画女優にアンナ・メイ・ウォンと云う仏蘭西人と支那人の混血児がいたが、あれにちょっと感じが似ている、或る種の欧羅巴人に気に入りそうな異国趣味の美人なのであった。
彼女は夫の旅行中徒然に暮す日が多いので、何卒奥さんに遊びに来て下さいと、アマを介して云って寄越したり、路で遇った時に誘ったりして、幸子に交際を求めるのだけれども、幸子は刑事の話を聞いてから、係りあいになることを恐れて成るべく近寄らないようにしていた。
お嬢ちゃんが御病気の時ぐらい蓄音器かけたかてええやありませんか、あの西洋人は近所附合い云うこと知らんのですやろかと、お春は憤慨したが、まあまあボッシュさんは変り者やよってに仕方ない、それに朝から蓄音器を鳴らすのは時節柄面白うない、と、貞之助が制したので、悦子はそれからは毎日トランプをして遊んだ。