お春は又、あたしは移ったかてちょっとも恐いことあれしませんと云って、病人が食べ残した鯛の刺身などを、外の女中達は手も出さないのに彼女一人はこの時とばかり貪り食べると云う風で、最初のうちこそ雪子にやかましく云われ云われして近寄らないようにしていたけれども、悦子が淋しがって頻りに呼びに寄越すのと、そんなに用心しないでもめったに移るものじゃありませんなどと「水戸ちゃん」が云うのとで、雪子の叱言もそうそう利かないようになって、この頃では一日病室に入り浸っていた。
そしてトランプの相手ならまだしも、「水戸ちゃん」と二人で悦子の手だの足だのを掴まえて、瘡蓋を剥がしては面白がっていた。
お嬢ちゃん、まあ見て御覧、こんな工合に何ぼでも剥がれますねんと云いながら、瘡蓋の端を摘まんで引き剥がすと、ずるずると皮が何処迄でも捲れて行く。