その瘡蓋を拾い集めて手の中へ入れて、母屋の台所へ戻って来て、ほら、お嬢ちゃんの体からこんなに皮が剥けるねんと、それを下働きの女中達に見せびらかして気味悪がらすのであったが、しまいには皆が馴れて恐がらないようになった。
妙子が何と思ったのか、今の間にちょっと東京へ行って来る、と云い出したのは、悦子の病気がそう云う風に日増しに快癒しつつあった五月上旬のことであった。
彼女が云うのには、自分はどうしても一遍本家の兄さんに直談判をして、お金の問題を解決しないことには気が済まない、自分は洋行は止めにしたし、今急に結婚すると云うのでもないが、少し計画していることがあるので、貰えるものなら早く貰いたいし、又どうしても兄さんが出してくれないのなら、そのように考え直さなければならない、勿論このことについては中姉ちゃんや雪姉ちゃんに迷惑が懸らないように、単独で、穏便に掛け合うつもりであるから、心配しないで貰いたい、ついては、別に今月でなければならないと云う訳でもないが、雪姉ちゃんが此方に来ている間の方が、泊めて貰うにも都合がよいと思うので、ふっとその気になったのである、自分はそんな狭い家の、子供が大勢騒いでいる所になんぞ、ゆっくり泊っていたくはないから、用が済んだら直ぐ帰って来る、見たいと思うのは芝居ぐらいなものだけれども、それもこの間此方で道成寺を見たばかりだから、今月はどうでもよい、と云うのであった。