しかし、それなら全然出来ない相談であるかと云うと、ここに一つ微かながら可能性があるのは、妙子が直接義兄に打つかって話す機会に恵まれた場合である。
なぜと云って、義兄は生れつき小心なところへ持って来て、若い時分から幸子以下の小姑たちに意地められつけて来たので、蔭でこそ強硬な意見を吐くけれども、面と向っては腰が弱く、少し此方が強く押せば折れてしまうと云う風であるから、妙子がちょっと嚇かして懸ればどう云う結果にならないとも限らなかった。
妙子もそれが狙いであり、それに一縷の望みをつないで東京行きを思い立ったのに違いないので、義兄は彼女に掴まえられないように逃げ廻るであろうが、彼女もさるもので、掴まえる迄は幾日でも頑張る覚悟かも知れなかった。