それならと云って、悦子のことはこの際雪子に任せて置き、妙子の計略の裏を掻いて自分も東京へ附いて行くと云う手を打つとすると、金を繞っての兄妹の争いの中へ捲き込まれることは必然であり、そして一層困ったことには、その場合孰方に味方をしてよいか、彼女自身の腹が極まっていないのであった。
雪子に云わせると、洋服店を経営すると云うこいさんの計画の蔭には板倉が干与していることは明かで、邪推をすれば、それは本家から金を引き出すための口実であり、金さえ取ってしまえば又どんな風に計画を変更しないものでもない、こいさんはああ見えても、案外お人好しの一面があるから、恐らく板倉の云うなり次第に利用されているのであろう、だからこいさんが板倉と切れない限り、お金なぞ出してやらない方がよい、と云うので、それも一つの観察ではあるが、幸子にして見れば、妙子があれほど意気込んで懸っているものを、横合いから邪魔をしてまで不成功に終らせるには忍びないところもあった。
彼女は妙子が自分達の忠告に従わないで、板倉との約束を貫徹する気でいるらしいことに不満は感じているけれども、かと云って、若い女の身空で誰の世話にもならず、一本立ちをしようとする健気な妹の志を思えば、徒に義兄の味方をして弱い者いじめをしたくはなかった。