三十二
雪子はもともと妙子をひとりで上京させることには反対で、いずれにしても中姉ちゃんが附いて行かないと云う法はない、悦ちゃんの病気はあんな風でもうほんとうに大丈夫なのだし、留守はあたしが預かるから安心して行っていらっしゃい、そんなに急いで帰らないでも、ゆっくり泊って来たら宜しいとまで云ってくれたが、妙子は幸子が附いて来ると聞くと、ちょっと妙な顔をした。
尤も幸子は、私は本家の思わくを考えて同行することにしただけなので、決してこいさんの妨害をするつもりはないから、こいさんはどうなと自由行動を取って、誰にでも打つかって見るがよい、兄さんや姉さんは私にも立ち会ってくれと云うであろうけれども、それは私の本意でないから、努めて避けるようにする、よくよく断り切れない場合には席に連なることもあろうが、公平な第三者たる立ち場を守って、こいさんの不利になるような行動は慎しむからと云い、東京の方へも、妙子が今度どう云う目的で上京するかと云う大体の輪郭を云ってやって、私も附いて行くには行くが、こいさんは私が介入することを好まない様子であるし、私自身もこの問題には関係したくないと思うので、どうかこいさんと直接の話にして貰いたいと、予め姉に宛ててそう云い送って置いたのであった。