尤も幸子は、私は本家の思わくを考えて同行することにしただけなので、決してこいさんの妨害をするつもりはないから、こいさんはどうなと自由行動を取って、誰にでも打つかって見るがよい、兄さんや姉さんは私にも立ち会ってくれと云うであろうけれども、それは私の本意でないから、努めて避けるようにする、よくよく断り切れない場合には席に連なることもあろうが、公平な第三者たる立ち場を守って、こいさんの不利になるような行動は慎しむからと云い、東京の方へも、妙子が今度どう云う目的で上京するかと云う大体の輪郭を云ってやって、私も附いて行くには行くが、こいさんは私が介入することを好まない様子であるし、私自身もこの問題には関係したくないと思うので、どうかこいさんと直接の話にして貰いたいと、予め姉に宛ててそう云い送って置いたのであった。
幸子は今度も築地の浜屋を宿にしたが、妙子は彼女と策謀しているような形になるのを避けて、用談を片附けるまでは渋谷に泊り込み戦術を取ることにした。
で、大阪を「かもめ」で立って、着いた日の夕方、取り敢えず幸子は妙子を連れて浜屋まで行き、姉を電話に呼び出して、これからこいさんを送って行きたいのだけれども、あたしは今日は疲れているので、よう行かない、こいさん一人では道が不案内だから、勝手ながら輝雄ちゃんか誰かを迎えに寄越してくれないであろうか、と云うと、それなら、あたしが迎えに行ってもよい、まだ晩の御飯前だったら、何処かで三人落ち合って一緒に食べたいから、銀座あたりまで出向いてほしい、と姉は云った。